脂肪肝とは
脂肪肝とは
肝臓に脂肪が異常に蓄積されている状態です
肝細胞の30%以上に脂肪がたまっています
もともと肝臓ではエネルギー源として脂肪を作り、肝細胞の中にためています。しかし使うエネルギーよりも作られた脂肪のほうが多いと、肝細胞に脂肪がどんどんたまっていきます。このように脂肪が蓄積し、全肝細胞の30%以上が脂肪化している状態を『脂肪肝』といいます。肥満指数(BMI=P13参照)25以上の人は、体中のあちこちの皮下組織に余分な脂肪をため込んでいますが、この皮下脂肪が肝臓にまでついてしまったということです。肥満と診断された人の20〜30%に脂肪肝がみられます。症状はほとんどありません
肝臓は沈黙の臓器と称されるように、ほとんど自覚症状が出ません。しかし診断されたということは、脂肪がたまって肝臓の働きが悪くなっているということです。手遅れになってしまう前に対処することが重要です。増加している生活習慣病のひとつです
食生活の欧米化に伴い増加しています。
脂肪肝と診断された患者さんの比率
- 期間
- 1989年 〜 2003年
- 対象
- 健康診断の初回受診者44,126人(年齢問わず)
脂肪肝の原因
原因は飲酒、肥満、糖尿病など様々です
アルコールの飲みすぎが原因の一つです
アルコールが原因の脂肪肝を『アルコール性脂肪肝』といいます。毎日3合以上の日本酒を飲む人の多くに脂肪肝が認められます。個人差はありますが、これはビールで大ビン3本以上、ウイスキ一ならダブル3〜4杯以上に匹敵します。元来からだの中に入ったアルコールのほとんどは肝臓で解毒され、体の外へ排出されています。この解毒の過程で、また肝臓の働きに異常が生じることにより、肝臓中に脂肪が増えてたまっていきます。肥満、糖尿病の人もなりやすいです
アルコールが原因でない脂肪肝を「非アルコール性脂肪肝]といいます。原因は肥満や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などによるものです。そういう人は、インスリン※1
の働きがにぶくなっています。インスリンの働きがにぶいと、肝臓に脂肪がたまりやすくなるため、脂肪肝になりやすいのです。
また近年、糖尿病では肝硬変で死亡する率が高いことが分かり、これまで深刻に考えられていなかった脂肪肝が、あなどれない病気であると認識されました。ただ日本人における軽度の脂肪肝は、いわゆる肥満体型ではない人にもみられます。運動不足とフアーストフードなどによる不規則な食事で、たった2〜3キログラム体重が増えただけで肝臓へ脂肪がたまる可能性もあります。
- ※1
- インスリンは、すい臓で作られるホルモンで血糖値を下げる働きをします。
少例ですが、薬物、妊娠、循環障害が原因で脂肪肝になることもあります
脂肪肝の進行
脂肪肝 ⇒ 脂肪性肝炎 ⇒ 肝硬変 ⇒ 肝がん へと
進行することがあります
アルコール性脂肪肝の場合は『ASH(アッシュ)』へ
飲酒を原因とするアルコール性脂肪肝の一部は『アルコール性脂肪性肝炎(ASH)」へと進みます。アルコール性肝炎とはアルコールの摂取が原因で肝臓に炎症が起こった状態で、肝細胞が急激に壊されて壊死したり、線維化により肝臓が正常に機能していない状態で、肝硬変の前段階とされています。そのまま暴飲を続けると肝硬変や一部は肝がんにつながる危険性があります。非アルコール性脂肪肝は『NASH(ナッシュ)』になる人も…
一方、肥満人口の増加に伴い非アルコール性脂肪肝になる人が増えています。以前は非アルコール性脂肪肝は進行しないといわれていました。しかし、飲酒の習慣がない人でも肝炎から肝硬変、肝がんへ進むケースも存在することが分かってきました。つまり、肥満などを原因とする脂肪肝もASHと同様の病態へ進行するということです。これを『非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)』といいます。日本では100万人近くがすでにNASHになっていると言われており、飽食の時代の肝臓病として懸念されています。
脂肪肝が進行すると
脂肪肝の検査
血液検査と画像解析で調べます
超音波(エコー)、CTなどの画像解析と一般的な検診による血液検査とを合わせて診断します
画像検査では脂肪の部分が白っぽく輝いて見えます。血液検査ではALT(GPT)、AST(GOT)の値が50〜100前後に上昇する場合が多く、y-GTPやコリンエステラーゼなども高くなります。ただし血液検査で異常が見られなくても画像検査によって脂肪肝が認められることもあります。
超音波画像
ぎらぎら白く輝いて見えます。腎臓と比べてかなり白く見えます。
肝生検による組織学的診断が必要な場合もあります
脂肪肝の程度が進み肝炎が疑われるとき、画像検査や血液検査だけでは脂肪肝か脂肪性肝炎か判断がつかないため、細い針を肝臓へ刺して肝臓の組織の一部を採取して調べる肝生検という検査が必要となります。
脂肪肝の人の肝生検による組織像
白い塊りが脂肪です。
脂肪肝の治療
ライフスタイルを見直せば改善できます
軽い脂肪肝であれば比較的簡単に改善します
原因が飲酒であれば量を減らすか禁酒をしたり、肥満が原因であればカロリー制限をしたり運動をして減量に努めます。適度な運動は治療効果を高めるので、ぜひ取り入れてください。生活習慣の改善
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- バランスの良い食事
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- 定期的に適度な運動(有酸素運動)
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- 十分な休養と睡眠
アルコール性脂肪性肝炎(ASH)の治療は何よリ禁酒が一番です
触診で触れることができた肝臓の腫れが、禁酒でみるみるうちに縮みます。これは肝臓内にたまっていた脂肪や水分が血液中に放出されるからです。肝硬変など重篤な症状に進行する前に禁酒を心がけ、なるべく心身の過労や睡眠不足を避けましょう。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療は低カロリーで栄養バランスのよい食事を心がけ、適度な運動を取り入れてください
肝臓に炎症や線維化がみられるNASHは、そのまま放置すると悪化する恐れがあ、注意が必要です。生活習慣を改めることで、原因となる肥満や糖尿病を改善しましょう。カロリー制限や運動による減量が効果的です。自覚症状がなくても、手遅れにならないうちにきちんと医師の治療を受けることが大切です。生活習慣改善の効果も確認してもらいましょう。生活チェック表
ひとつでもチェック項目があれば、生活を見直しましよう
生活チェック表
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- 毎日お酒を飲んでいる
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- 太っている※1(特に20才の時より10kg以上増えている人)
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- 夜食をとる習慣がある
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- 早食い、大食い、まとめ食いをする
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- 好き嫌いがある(偏食している)
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- 甘いものや脂っこいものこってりしたものが好き
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- カロリーをとり過ぎている※2
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- 塩分をとり過ぎている※3
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- 適度な運動をしていない※4
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- 不規則な生活をしている
- ※1
- 肥満となる指標
BMI(肥満判定に用いる数値)=体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)正常 : 18.5 ≦ BMI < 25ウエスト周囲経
肥満 : BMI ≧ 25
理想 : BMI = 22
肥満 : 男性 85cm以上/女性90cm以上 - ※2
- 1日の摂取カロリー
標準体重 × 25 〜 35kcal
標準体重 = (身長 − 100) × 0.9 - ※3
- 1日の摂取塩分
10g以下
- ※4
- 適度な運動量
できれば毎日、早足で30 〜 40分の徒歩(8,000 〜 1万歩)
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- 特定健診の受診勧奨判定値より
- 資料提供
- 田辺三菱製薬株式会社:Q&A脂肪肝といわれたら